町会活動が盛んで、「多様性」が神保町の魅力  – 千代田区神保町出張所 武笠真由美所長インタビュー

梶並芽衣、原田朱理、井上紗英、石井萌(3年)

お話しいただく武笠真由美所長

千代田区の行政としての取り組み

神保町出張所の役割は行政窓口、区民館の管理運営、地域活動の支援です。今回は、武笠さんが担当されている地域活動の支援についてお話を伺いました。

神保町は関東大震災や第二次世界大戦などで焼け野原になったという歴史があります。靖国通りなどの広い道路は行政が整備してきましたが、古書店街などは神保町につながる人々が作り上げてきたそうです。武笠さんは、こうした町の皆様の取り組みが神保町の多様な魅力の特徴につながっている、とおっしゃられていました。過去に武笠さんが街づくりの担当になられた際も、街づくりワークショップを行い、地域の人々の意見を聞くなどして、協力してまちづくりに取り組まれたそうです。他にも千代田区では、大使館と協力して様々な国のイベントを開催したり、食事に制限があるムスリムの方向けの「ムスリムマップ」の作成をしたりと、異文化理解に向けた取り組みも行っておられるとのことでした。

お話を通して「地域の人あっての街づくり」というお言葉が、強く印象に残っています。武笠さんの、町の人々との「つながり」を大切にし、一緒により良い街をつくりたいという、神保町と人を思う気持ちが伝わってきました。私たちも、神保町の方々とつながりを持ち、町の声を聴きながら、神保町の街づくりに関わっていきたいと思いました。

神保町にたたずむ千代田区神保町出張所

町会活動が盛んで、「多様性」が神保町の魅力 – 行政から見た神保町

神保町の特徴として、「町会活動が盛んであり、住んでいる人々が愛着を持って住んでいる」ことを挙げられていました。そういった町会活動等に対する支援は積極的に行われているとのことです。

また、武笠さんは、行政の仕事は行政だけでは成り立たず、住んでいる人、働いている人、訪れる人なくしては成り立たない、その上で、地域の方々と協力をしていきたいという考えを持っておられました。これからの神保町のまちづくりへ向けて、街をより良くするという共通認識の下、地域コミュニティと行政の連携がますます重要になってくるのではないかと感じたと同時に、私たちが街づくりをしていくにあたって、各方面から神保町と結び付くすべての人々に対してアンテナを張ることを常に意識しながら取り組んでいきたいと思いました。

神保町には、古本屋、大学や楽器屋など多種多様なお店や施設が集まっています。武笠さんは、そのような「多様性」が神保町の魅力或いは特徴であるとおっしゃっていました。さらに、学生である私たちに求めることとして、神保町の多様な主体の一人として、行政に参加することを期待されていました。新たな出会いを大切にしながら今後街づくりをしていくことで、神保町の魅力である多様性についてさらなる実感を持って発信していきたいと感じました。そして、神保町の街づくりを通じて、私たちだけでなく他の学生を巻き込みながら、行政を含めた地域社会への活動に率先して参画していきたいです。

コロナ前後での神保町の変化

コロナ禍で変わったことについては、次々とお店が閉まっていっていること、そして、その建て替えや土地の更新の関係でマンションが増えたことが挙げられるそうです。これまで看板建築(1923年の関東大震災を機に出現した、平らな壁面に銅板やタイルが貼られた木造の商店建築)だった場所に、ワンルームマンションが立つなど、街の景観も変化しつつあります。

また、マンションの他にも、新しく一人専用の焼肉屋さんなどができるなど、新しいスタイルのお店も増えつつあるそうです。それに加え、老舗の料理店がテイクアウトを始めるなど、神保町はこれまでとは違うスタイルでも楽しめる街になりつつあると武笠さんは言います。

また、千代田区は中小企業等のキャッシュレス対応への補助も行っており、神保町でもキャッシュレス化が広まりつつあるといい、ポストコロナとして、元々ある古書店や喫茶店のような伝統的な文化とそういった近代的な文化が融合したような、共存するような神保町を武笠さんは見通しておられました。

そこで私たちは、それにより伝統的な文化が失われていくのではないかという懸念を投じると、武笠さんは有名な老舗和菓子屋であるとらやさんの、伝統に対する考えを教えてくださいました。「伝統とは古いものにしがみつくことではなく、新しい取り組みを重ねる中で継承していくこと、つまりは革新の連続である。」というものです。

この考え方を取るとするなら、行政にできることは、伝統的なお店が新しい取り組みを始める時に協力・支援すること、中小企業等が困った時に支援したり事業を周知したりしていくことだと武笠さんはおっしゃられました。

街並みが変わっていくことを、私たちは「伝統が失われていっている」と考えてしまいがちですが、悲観するだけでなく前向きに捉え、神保町に対して行政にできることを模索されている姿がとても印象的でした。

7月20日のゼミでは、高山本店4代目社長の高山肇さん(元千代田区議会議員)、神保町地区地域コミュニティ活性化委員会・委員長の青野芳久さんからもお話しをお伺いしました。それぞれの記事もご覧ください。

最後に

今回のインタビューを通して、武笠さんは神保町の住民や、神保町で働いている人々のことを第一に考えて行政のお仕事をされているのだと感じました。行政主導ではなく、人々が主役の街づくりが行われてきた結果として、神保町が今もなおオリジナリティがあり、魅力あふれる地域になっているのだと思いました。

武笠さん、お忙しい中、お話をお伺いさせていただきありがとうございました。

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